第74話

ジリリリリ。




少し古めかしい呼び鈴が鳴り、新が玄関へと足を伸ばす。私は未だ完全な人型にはなれずにいるので、居間の扉の隙間からこっそりと観察する。



新の家にはたびたび配達員がやってくる。荷物の配達や集荷だけじゃなくて、精肉店、魚屋さん、八百屋さんといったお店の移動販売のときもあった。





……私がいるから引きこもり生活をしているのかな。




おそるおそる新に聞いてみたけど、「家が好き」というシンプルな答えが返ってきて、ちょっと笑ってしまった。



新は結構、自分の気持ちに正直に生きていると思う。私を甘やかしている時とか特に楽しそう。はっきりと喜びが滲み出ている。






私には到底できないことだから、この人とは何もかも違うんだなあと改めて思い知らされる。

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