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第73話

一週間もすれば、新との生活も体に馴染んできた。





私の1日のスケジュールも自ずと決まってきて、午前中は家の掃除を進め、午後は改装した蔵で新のコーヒー豆事業の手伝いをするようになった。



手伝いと言っても、焙煎済みの豆を袋に詰めたり、届け場所の地域ごとに分別したりといった作業がほとんど。頭を使わないので誰にでもできるようなものばかりだ。

 





「ありがとう。モネがいてくれるからすごく助かる」

 


 


……でも、新からは大袈裟に感謝されてしまう。




その度に、「別に私じゃなくてもできる仕事だし」という捻くれた自分と、「褒めるなら頭を撫でて欲しい」という欲が生まれる。




言葉にするのは苦手なので、後者の方を催促するように三角耳を倒してみせる。するとすぐに、撫で方を熟知した新の手が振ってくる。その心地よさがたまらなくて、無自覚ですりすりと頭をこすりつけてしまう。

 




「撫でられるの好き?」


「……嫌いじゃない」





尻尾はピンと立ってるんだからそれで察して欲しいのに、新は私に言わせようとしてくる。本当にしつこい。






この男の思い通りになるのは癪だから今のところかわし続けているけど、いつまで続けられるか。ちょっと自信がなかった。



だって私たちは、基本的にこの家から出ることはない。日々の生活が二人きりの世界で完結している。

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