第60話

ほーん?なるほどね?さすがに気づいてしまう。文香は新が好きみたいだ。




まあ、あの美しい見た目とか、優しい口調とか、それだけでも恋に落ちてしまう理由としては十分だ。で、私が新のそばにいるのが不満に思ってるのねえ。ふーん?



私はニヤリ。意地のわるそうな顔で笑ってみせた。文香は嫌な予感がしたのか、眉間に皺を寄せている。

 




「新〜?」




 

グッドタイミングで居間に戻ってきた新に駆け寄る。新からふわり、コーヒーの香りがした。

 




「モネ?どうしたの?」


「抱っこして」


「うん、いいよ」


 



ひょい、と私を抱き上げる新。私はドヤ顔で文香を見下ろし、挑発するように尻尾をくねらせた。彼女は目を見開いて悔しそうにハンカチを握りしめている。




ザマアミロ!私を妖怪呼ばわりした罰だ!因果応報だ!




得意げに笑う私を抱き上げたまま、紙袋にコーヒー豆を詰めていく新。片腕に成人女性を乗せているのに動きは至ってスムーズ。さすが元殺し屋の筋力。

 



結局、私を一度も床に下ろすことなく、新はコーヒー豆の受け渡しを完了させ、二人で文香を玄関まで見送ることになった。

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