新は困ったように小さく笑ってから、空のお皿を持って席を立った。

「……コーヒーはどれくらい買っていく？」

「いつもと同じ量でお願いします」

新は奥にある蔵の中でコーヒー豆の焙煎と販売を行なっている。販売といっても通販での取引が基本。最近はご近所さんにだけ特別にコーヒー豆を販売していて、お茶請けと一緒に新のコーヒーを出している旅館もあるという。

文香は定期的に旅館が所有する車を使いコーヒー豆を買いに来ていた。

二人が顔馴染みである理由も判明したけど……気に食わない。

何が気に食わないって、私は今、たった今！新がコーヒー豆を販売してることを知ったんだよ！？ついでって感じで新から説明受けてさあ、なんか、なんか、この文香とかいう女に負けた気分なんですが！？

新の背中を睨みつけておく。後でいっぱい文句を言うと決めた。

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