第57話

しめじの豆乳味噌スープに、梅としらすと大葉の和風パスタ。どちらもやさしい味でとても美味しい。おかわりをしても罪悪感のなさそうなところも私好み。



ただ、じろじろと観察されるようなこの煩わしい視線のせいで、全く落ち着いて食事ができない。




 

文香ふみかちゃん。モネのことは周囲の人には話さないようにね。できる?」


「話しませんよ。言っても誰も信じませんし」



 


新に文香ちゃんと呼ばれた人間は、この家から車で15分ほど行ったところにある旅館の仲居見習いだという。先ほど私をねこ人間と呼んだあいつである。




今は落ち着いた様子を見せる彼女と、私と、新。3人で新お手製のパスタを食べている。私たちの悲鳴を聞いて駆けつけた新が、なぜか彼女を誘ったために実現した謎の昼食会。




文香はちゅるちゅるとパスタを啜りながらこちらを凝視し続けている。主に三角耳と尻尾に熱い?視線を向けられて、居心地の悪さが尋常じゃない。





「それで、俺のことを心配して庭まで様子を見に来てくれたんだね?」


「はい」

 

「俺を気にかけてくれたことはとても嬉しい。でも、君はもう少し警戒するべきだ。ここはご高齢の方が一人で住む家じゃない。下手すれば君の身が危ないよ」


「新さんは私に危害を加えるようなことはしません。ちゃんと分かって行動してます」





口元をハンカチで拭った後、姿勢良くキリッとした顔を作る文香は、全く反省していなさそう。

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