第55話

「……困らせたつもりないんだけど」


「そうだよね。俺が勝手にモネの可愛さにやられてるだけだから。気にしないで」





気にするなと言うなら初めから言わないで欲しい。言葉にできないむず痒さに襲われて、その辺を走り回りたくなる。





「天井の埃はどうやって掃除したの?」


「どうやってって……この埃叩きで、」


「ぴょんぴょん跳ねながら?」


「み、見てたんじゃん!」


「ふふ。うん、見てた。頑張ってるなあって。モネはすごいね。何をしていても可愛らしい」





ここは布団の中じゃないのに、肩をやさしく抱き寄せられた。私の頭頂部あたりを軽く頬擦りしている。抵抗したくても、新の香りが鼻腔いっぱいに広がってダメだった。強張った体もふにゃふにゃになる。





「モネがずっとここに住んでくれたらなあ」




 

甘い新の言葉に思考が溶かされていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る