第53話

「私、掃除が得意だから、家の掃除する」

 



新が畑を見てくると言うので、その前に自分も手伝えることをアピールしてみた。今日は気持ちに余裕があるし、そろそろ何かしないとあまりにも自分がダメすぎる。

 




「ありがとう。でも、無理はしなくて良いんだからね?」


「大丈夫。少しは体動かさないとデブになる」


「デブって……モネは細いよ。もう少し肉付きがよくなっても良いと思うな」




 

後半の戯言はさらっと聞き流して、掃除道具の場所を教えてもらう。新の言葉はあまり信用できない。相手は甘やかしのプロだし。




私にはたっぷり時間があるので、この家の隅々までピカピカにしてやろうと思う。早速寝室の掃除から取り掛かったけど……20畳の部屋を掃除するということを私は完全に舐めていた。





布団をしまってから、髪を1つにまとめて気合いをいれる。庭の方角から生暖かい視線を感じたけど、それには無反応を貫いた。



古い木造の家は梁がたくさん通っているから天井に埃が溜まりやすい、と聞いたことがあったのでジャンプしながら埃を叩いた。



私がずっと陣取っていた部屋だったので、新も手を出せていなかったらしい。ふわふわと細かい埃が落ちてくる。





電灯のカサも丁寧に埃を取り除いて、畳の目に沿って掃除機をかけて、襖の溝はちりとりと箒で格闘して。



 

「モネ、そろそろお昼にしない?」



 

……新に声をかけられてびっくりした。掃除を始めて五時間以上も時間が過ぎていたらしい。

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