第51話
「おはよう、モネ」
振り返ると、立派なカウンターキッチンの奥に新がいた。アルミの手鍋の中をおたまでぐるぐるとかき回している。匂いでわかる。あれは絶対に味噌汁だ。
「眠れなかった?」
「ううん。寝過ぎて今起きた」
やさしい瞳で笑いかけられる。声に出ていなくても、眠れてよかったねという言葉が聞こえてきそう。
私は顔を洗っていないことに気づき、洗面所へと踵を返した。明るいところで見る新の美しさは凄まじい破壊力で、汚いままの自分がそばにいるのは申し訳なく感じてしまった。
洗顔を終えて、寝癖もある程度整えてから居間に戻ると、テーブルの上にザ・和食の朝ごはんがバッチリと用意されていた。
「一緒に食べよう」
「うん」
おひつに入ったごはん、油揚げとわかめの味噌汁、鮭のみりん醤油焼き、茄子のおひたし、キャベツの浅漬け、豆腐の冷奴。大根おろしと海苔と梅干しはテーブルの中央に置かれていて自由に取ってよし。ころんと置かれた卵は、お好みで卵かけご飯にして食べる用にとのことだった。
まるで旅館の朝ごはんのような品数は、新の超人じみた家事スキルが遺憾無く発揮されている。
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