第50話





今日は、なんとなく起きてみようと思えた。

 



最近は昼夜逆転生活が続いていたけど、無理やり目を瞑っていたらそのまま18時間ぐらい寝ることができて、うまい具合に早朝の起床が成功したのだ。




昇ったばかりの日の光が朝の冷気とともに輝いている。柔らかで澄んだ空気が私の肺の隅々まで浄化していくみたいだった。




……冬の朝が、光であふれていることなんて、知らなかった。




布団からのそのそと這い出て、部屋の隅のポールハンガーにかけられたカーディガンを肩にかけた。明らかにメンズサイズで、くんくんと匂いを嗅いでみる。薄くなっているけど、新の香りがした。


 


廊下を歩くたびにギシギシと音が鳴る。ガラス戸越しに見える庭は、霜が降りているのか薄緑色になっていて、とてもきれいだった。


 



庭を眺めながら廊下を進み、突き当たりを右に曲がってみる。




そこは、初めて踏み入れる空間だった。

 



ダイニングテーブルと椅子、その奥にはL字ソファとローテーブル。寝室は和室だったけど、ここはどちらかというと洋室寄り。




色の濃い太くしっかりとした柱と梁に覆われている木の空間は、歳月を重ねた佇まいではあるものの、モダンな家具や照明がセンス良く配置されていて、古臭さを感じさせない。

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