第49話

「心は誤魔化せたつもりでも、体は正直なんだよ。今は無理せず、寝られる時に寝てしまったほうがいい」





私はただ寝て起きてを繰り返しているだけなのに、新は全てを許してしまう。この男の甘やかしは止まらない。でも、私には罪悪感を抱けるほどの心の余裕もない。





「新……寒い」


「寒い?もっとそっちに寄ろうか?」


「うん」



 


新は本を閉じて、私の肩を抱き寄せる。涙で冷えた瞼を新の親指が攫っていくと、ゴロゴロと喉を鳴らしそうになる。




 

「おやすみ、モネ」


「……おやすみ」


 



何度目かの二人のおやすみは、もう何年も繰り返しているような、耳馴染みのあるものになっていた。

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