第45話

怖い、と言ってしまえば、私たちの関係はこれっきりになる。そんな予感があった。



今まではそれでよかった、それを望んでいたはずだったのに。私の頭はおかしくなったかもしれない。




恥ずかしくて目を合わせることはできない。誤魔化すように新の胸元にぐりぐりと頭を押し付けた。意識すると新の胸板が薄くはないことがわかる。これは…わからないままでよかったかも。




私の行動をどう捉えたのか、新は私をぎゅうぎゅうに抱きしめた。ちょっと苦しいくらいだ。



もしかして、結構喜んじゃってる?それはそれで悔しいものがある。



 



「ねえ、モネ。俺なら、君を狙う人間の正体を突き止められるし、君にとって脅威となるもの全てから守ってあげられる。だから、もうしばらくここに住まない?」




 

甘い甘い提案に、私は一瞬呼吸を忘れてしまい、はあ〜、と大量の息を吐き出した。危ない危ない。なんだか良くないところに落っこちてしまいそうだった。

 




「それ、新になんのメリットもなくない?」


「メリット?」


「だって、私、お金持ってないし、命は狙われてるし……獣人だし。厄介者でしかないよ」


「うーん。俺はモネとの生活が楽しくてしょうがないよ。それにすごく癒されるんだ。この家は一人で住むには広すぎるから、モネがここにいてくれたらなって思う。君さえ良ければ、だけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る