第42話

「な!?お、お前、この人が誰なのか知らねえの!?」


 


突然赤髪に大きな声で話しかけられて、私の長い尻尾がブワッと広がる。すかさず庭に降りて新の背後に隠れる。新はぺたんと倒れた私の三角耳の間を、後ろに梳くように撫でてくる。




 

「……俺の質問に答えてくれるかな?」



 


普段とさして変わりのない穏やかな問いかけだったけど、そこには従わせるための強制力が含まれていた。赤髪短髪男はその静かな圧に耐えられなかったらしい。

 




「〜〜メールだよ!メール!使い捨てアドレスで一斉送信!だから送り主はわからねえ」


「依頼内容は?」


「日本に住む猫獣人の死体を持ってきたら100万ドルくれるってやつだ。俺たちのような末端の、殺しを生業にしてる人間宛に手当たり次第送ってる。添付されてた口座情報は本物だったし、迷惑メールじゃねえってことは分かるやつには分かる仕様になってたな」


「……なるほどね。相手は本気みたいだ」

 



 

想像していた以上に物騒でスケールのでかい内容だったので、闇雲に逃げようとしていた自分の行動を反省した。



実家に逃げるなんて言語道断。そんなことをしていたら関係ない人も巻き込まれていたかもしれない。

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