第40話

「新」


「ん?」


「その……拷問、とかしないよね?」

 

 



ココアに口をつけながら恐る恐る聞いてみた。新はにっこりと微笑みながら「そんなことしないよ」と断言したので、胸を撫で下ろした。


 


――直後に、男の顔面にマグカップ一杯分の水をびちゃびちゃと垂らした新。私はすん、と真顔になる。




それは拷問じゃないんですよね?信用、してもいいんですよね……?



ただ、やさしさのかけらもない乱暴な振る舞いも、新が行えば品位が備わっているように見えるので不思議である。私はこの人に暗示をかけられているのかもしれないと本気で疑った。




 

突然呼吸ができなくなった男は、ゲホゲホと激しく咳き込みながら強制的に意識を取り戻していた。

 



 

「こんばんは。目は覚めたかな?」





赤髪短髪男はむくりと上半身を起こす。そのしなやかな動きは肉食動物を彷彿とさせた。睨み殺しでもしそうな眼つきで新を見据えている。



その鋭い雰囲気に充てられて、私の肩が震えてしまった。可愛らしい少年のような顔立ちをしているけど、男に殺されかけた恐怖は私の体に染み付いていたらしい。

 

 

……ここにいるって言ったのは私なのに、情けない。

 

 

怖いと思ったことはバレないように、毛布にできる限り体を埋めておく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る