第29話

……いやいやいや。モネ、あなた馬鹿なの?この状況がだいぶまずいってことも分からない?このまま逃げ出したくなくなったらどうするわけ?泣くのは自分だよ?



他人を簡単に信用しちゃいけないんだから。



 

「モネ?眠れない?」

 



布団からそっと抜け出そうとして、ちゃんと失敗した。正直成功するとも思っていなかったので、落ち込むことはない。


新の掠れた声に耳がゾワゾワして、落ち着かないのはとても困ったけど。



 

「トイレに行きたくて」


「連れていくよ」

 


 

どうせそう言われるだろうと分かっていたので、新に向かって両手を伸ばした。でも、新は驚いたように目をみはったまま動こうとしない。





「新?抱っこしないの?」


 



私の言葉で我にかえったのか、切れ長で甘い瞳を緩ませた。

 



「いや、うん。抱っこするよ」


「なに、その歯切れの悪さ」


「そうだね……これを言ったら君は怒るだろうから我慢したのだけど」


「じゃあ言わなくて良いです」


「あまりに可愛い姿に時が止まっちゃって」


「……言わなくて良いって言ったのに!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る