第30話

自分が可愛いと言えば老若男女釣れるとでも!?私は違う!舐めるな!



しっぽを大きくバタバタと動かして、気に食わないと全面的にアピールしまくった。



ただ、トイレには連れて行って欲しいので、抱っこはちゃんと要求させてもらう。新はクスクスとお上品に笑っていた。

 



暗い廊下の突き当たりにある扉の前で下ろされた。その扉はかなりの年季が入っていて、「和式トイレだったらどうしよう」という不安が頭をよぎる。




「……このトイレ、古い?」


「水回りは全て最新式に替えてあるよ?このトイレも、人感センサーでフタが自動で開く優れものなんだ。もちろん温水洗浄付き」



 

トイレの機能について熱く語る姿は、土鍋やお風呂の温泉を説明していた時と重なるものがある。

 


新って、日本人っぽい名前だし日本語も違和感なく話すけど、どうもクールジャパンに弱い気がする。新って、変なギャップをお持ちなんですね。




とにかく、和式トイレでなければそれでいい私は、早速トイレに入ろうとした。

 


……でも、なんだか嫌な予感がしたので新を振り返る。彼は不思議そうに首を傾げている。

 

 

 

「トイレの前で待つとか言い出さないよね?」


「……」


「新?」


「……寝室に戻るときモネが困るよ?」


「だとしても真ん前で待つとかあり得ない。絶対絶対あり得ない!」


「はあ、分かったよ。しばらくしたら迎えにいくから、扉の前で待ってて」





まるで私がわがままを言っているみたいな言い草。けれど、今回はあえて見逃した。

 

扉を閉めて、新の気配が離れたことを確認する。

 


――よし、逃げよう。

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