第19話

そのままやさしい手つきで背中を撫でられて、けほけほ咳き込む私の顔を心配そうに覗き込む。添い寝のときから薄々気付いてたけど、この密着度は心地が良い。



それはいつの間にか私を虜にしていたようで、無意識に擦り寄ってしまった。


 



「もっと撫でて……」


 



あまつさえ、とんでもないことを口にしてしまう。

 


苦しくて涙が出そうになり、すんすん鼻を啜ると、あの香りが鼻腔をくすぐった。

 

これがいけないんだ。肺いっぱいに吸い込みたくなるような、この魅惑的な香りが。私をおかしくさせる危ない香りだ。




 

「辛かったね。モネがいいと言うまで、ずっと撫でるからね」




 

全部夢だと言われてしまった方が、まだ信じられる。


まさか、私を甘やかす人が存在するなんて、思いもしなかったから。

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