第18話
「君の名前はなんて言うのかな」
「……言いたくない」
「うーん、どうしても?」
無駄に艶のある声でドキドキする。私が頷くと、新はしばらく思案してから私のことを見つめなおした。
「俺のことが信用できないなら、偽名でもいいよ」
「偽名……」
偽名、いいかもしれない。この新という男が私を狙う人たちと手を組む可能性だってあるんだし。むやみやたらにこちらの情報を明け渡すなんて、それは馬鹿な人間がすることで……
「じゃあ……モ、……モネで」
「モネ、か。素敵な名前だ」
微笑む新をよそに、私は項垂れてしまった。
モネ、あんたは馬鹿だよ……なんで本名教えるの……馬鹿すぎるよ……。
自分を引っ掻き回したい衝動はなんとか抑えつつ、勢いよく出汁を飲み干そうとしたけれど、気管に入って激しく咽せてしまった。
「大丈夫?水は飲む?」
……もうやだ。自分が情けなくてたまらない。お願いだからこれ以上構わないで欲しい。
私の要望なんて知るわけない新には、肩をグッと抱き寄せられてしまった。私はいやいや抵抗したのに、新の身体はびくともしない。
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