第15話

「食欲があるのはいいことだね。食べたいものはある?」



 


毛布の間から男を睨みつけても、彼はにこにこと笑っている。


全身から信用してもいいよ〜のオーラが出ていて逆に怪しいし、なんか……ムカついた。

 




「……うどんがいい」


「うどんね」


「あったかいのがいい。熱すぎはだめ。卵は半熟で、わかめとかまぼこ入ってるやつ。ネギは嫌い」


「分かった」




 

看病してもらったのに、ごはんにあれこれ注文つけるのはとっても性格が悪いけど、私はとにかくこの男を困らせたかった。


でも、彼は私の刺々しい言葉に苛つく様子もなく、物腰やわらかい態度を崩さない。




 

「うどんはすぐにできるけど、毛布一枚じゃ寒いよ?布団の方があったかいんじゃないかな」


「そんなの知ってるし!」


「そっか」




 

そうやって目尻を下げて、自分は穏やかな人間ですって顔をしても、私は騙されないんだから。

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