第5話

けれど、目の前の男は不可解な状況をものともせず、むしろ楽しそうに尻尾をゆっくりと撫でている。


 



「君の尻尾は素直でかわいいね」




 

この尻尾は欲求にとても従順で、意思とは関係なく動く厄介な存在だった。乱暴に尻尾を引っ張って無理やり剥がしても、すぐに男の手首に絡みついてしまう。



 


「もう!言うこと聞いて!?」


「俺は嬉しいよ?」



 


嬉しいってなに?え、怖い。一周回ってとても怖くなってきた。




だって、獣人に全く動揺しないのは人間として普通じゃない。なぜかちょっと喜んでるのも理解できない。この人、頭が残念なそういうアレな人間なの?



私がごちゃごちゃと考えているうちに、尻尾を掴む私の手をそっと離した男は、隣にごろんと寝転んだ。





「〜〜だ、だから!添い寝は!」


「見て?俺の腰に巻きついてるよ」




 

クソだな尻尾!今すぐ引っこ抜きたい!



恥ずかしさやら焦りやらでもうどうすればいいかわからず、ふんふん鼻息を荒くすることしかできない。その隙をつくように男の腕が私の頭の下を移動して、そのままぎゅっと抱きしめられてしまった。

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