第24話小学生の頃
小学生の頃は、将来に不安なんてなかった、なんにでもなれる可能性の未来が広がっていた、もっと背が伸びて、かっこいいお姉さんになれると思っていた。が、小中高、大学、就職と過ぎれば、小学生の頃の自分が、どれだけお気楽でいたのか分かる。赤いランドセルを背負っていた頃に戻ってやり直したいと、思ったことは一度や、二度じゃない。今日も、上司の小言に鬱になりそうな気分で帰路についていた。こういうとき愚痴を聞いてくれる彼氏でもいればいいのだが、生憎、ここ数年、色恋とは無縁だった。ふと、赤いランドセルを背負った子供たちの集団とすれ違った。何の悩みもなさそうに笑って歩いていた。その最後尾にいた女の子が、急に立ち止まり、私に手を差し伸ばした。
「お姉ちゃんも,行こ!」
「え?」
ちょっと驚いたが、私はその子の手を取って、赤いランドセルを背負ってその子供たちの集団の一員になった。もう会社に行かなくてもいいし、上司の小言を聞く必要もなくなったが、その日から、私の姿は、幽霊のごとく誰にも見えなくなった。
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