第17話ごめんなさい

友達と飲んで、帰りが遅くなった夜道、いきなり現れた女の子に服を引っ張られた。

「ごめんなさい、ママ。ちゃんということ聞くから、もう、暗いとこから出して、暗いの怖い」

「あなた、誰?、お家どこ?」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「だから、ごめんなさいじゃなくて、あなたのお家はどこなの?」

知らない子だった。この近くの子だろうとは思うが、私は、まだ結婚も出産の経験もない二十代である。

ママと呼ばれるほど老け顔だとは思っていない。放置子というやつだろうか、育児放棄した親が、子を家の外に放り出す。暗いところに閉じ込められる罰を何度も受けているのか、とにかく、これは、警察にと思いスマフォを手にしたが、電波が、繋がらない。

え? なんで、こんな住宅街の真ん中で携帯が使えないの?

と、こうなったら、近くの交番に。交番に警官がいなくても、最寄りの署への直通電話があるはず。と考え、女の子の手を取って歩き出したが、あるはずの場所に交番がない。というより、自宅に向かっていたはずなのに、いつの間にか、見知らぬ場所に立っていた。暗くて、道を間違えたか。とりあえず、コンビニでも見つけて、現在地を店員に聞こう。もし、できることなら、そのコンビニにこの子を押し付けたい。そう思い、女の子と歩き回ったが、コンビニはなく、夜が明ける気配も一向になく、だいぶ歩き回ったが、街は暗いままで、ずっと誰にも会わなかった。

「ごめんなさい、ママ、ごめんなさい・・・」

この子のせい?

ふと立ち止まって、この子をこのまま置き去りにすれば、この夜の暗闇から抜け出せるかも。

そう考えて、つい、女の子の手を払い、自分一人だけで、闇雲に女の子から離れようと走った。

「・・・」

よし、これくらい離れればいいかなと思ったとき、誰かに服を引っ張られ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ママ」

と、暗い夜の町で、また女の子の声を聞いた。

「うそ、なんで・・・」

逃げ道はないと、私はやっと自覚した。

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