第16話繰り返し
人間は生きたいという執念が強いため、自分の死というものを、簡単には受け入れないものである。病気で長いこと通院や入院でもしていれば、それなりに自分の死について覚悟は出来るだろうが、突然の事故などで即死した場合、自分が死んだと認めるのは容易ではないだろう。
だから、霊は彷徨う。通勤通学の途中に事故死したら、自分が死んだという自覚がなくて、目を覚まして、会社や学校に向かおうとする。いつもと変わらない生前の日常を繰り返そうとする。
だが、それが、日常の繰り返しなら、いい。どうやら、殺人鬼は自分は殺す側の人間で逆に殺されるとは考えていなかったようだ。反撃されて死んだはずの殺人鬼は、自分がやられるはずないと、今日も、殺したはずの被害者の霊を再び殺そうとして、追い掛けていた。
「たく、いい加減、自分が死んでいると気付けよ」
だが、何度こっちが反撃して殺しても、翌日には、同じ廃墟で、殺人鬼との追いかけっこを再スタートをしていた。もしかしたら、殺したいという執念だけしか残っていなくて、これが霊同士の不毛な繰り返しだと気付く理性が残っていないのかも。だからと言って、黙って殺されてやる義理もないので、今日もしっかり反撃する。相打ちになる結果は変えられないようで、翌日、一からやり直しで、被害者の怨念が残っていると心霊スポットとして有名になっていた。本当は反撃された殺人鬼の怨念が残っていて、被害者である、俺は、もう成仏させてほしいのだが。心霊スポットとして遊びに来る奴は多いが、死んだ被害者と殺人鬼に花を手向ける者は誰もいなかった。
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