第15話公園のブランコ

そのおっさんは公園のブランコを独り占めするように揺らしていた。ブランコには誰も乗っていないのに、ただ前後に揺らしているのだ。公園には、他に子供がいて大人が遊具を独占していい雰囲気ではない。

娘が俺の腕を引っ張り、ブランコ乗りたいと言った。

うむ、ここはパパとして、そのおっさんに注意してブランコを譲ってもらおうと近づいた。

「あの、すみません、うちの娘が乗りたがっているのでブランコ譲ってもらえませんか」

なるべく丁寧な口調で言ったのだが、そのおっさんがキッとにらんだ。

「うちの子が遊んでいるんだ。ブランコに乗りたければ、他所に行ってくれ」

誰も乗っていないのに、変なこと言うおっさんだなと思ったが、そばにいた顔なじみの子連れのママさんが俺にささやいた。

「私たちも言ったんですけど、子供が遊んでいるの一点張りでどかなくて・・・」

なるほど、観察してみると、他の子連れのママさんたちもただブランコを揺らしているおっさんを迷惑そうに見ていた。

「パパ、もういい。それより、あの子、すごいけがしてるけど、大丈夫かな」

と、娘が誰も乗っていないはずのブランコを指差した。

娘には、何か見えてはいけないものが見えたらしく、俺は娘の手を引いて足早に公園を去ることにした。


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