第12話ホラー映画のお約束
「ホラー映画のお約束って知ってる?」
血まみれになりながら、地面を這いずるように逃げる女に優しく説明する。なんで殺されるのか、理由を教えてあげないと可哀想と思ったからだ。
「い、いや、た、高志、高志!」
彼女は助けを求めて恋人の名を呼んだ。が、あがく様に伸ばした手が触れた先に、冷たくなり始めた男の遺体があった。
「高志、いや、高志・・・」
生きていたら自分を助けてくれたであろう男の死を知り、絶望が加速する。
「ほら、ホラー映画で必ず、殺されるリア充の恋人たちっているだろ? どうして、ああいう登場人物が必要かというと、供養のためなんだよ」
「供養?」
「そう、青春を満喫できずに死んだ童貞や処女の怨念を鎮めるため、いわば、生贄かな。作中でリア充を殺すことで、映画関係者に祟らないでって。分かる? もし、リア充の恋人たちが危険を乗り越えてそのまま単純にハッピーエンドを迎えたら、むかつくと思わない? だから、リア充の恋人はホラー映画では殺される運命にあるんだ」
「な、何言ってるの、た、助けて、何でもするから。抵抗しないから命だけは助けてよ?」
「頭悪いね、君は。最近ホラー映画が減ったから、こうして僕たち自身でリア充狩りをやってるんだ。何でもするなら、僕たちのために、死んでよ」
そして彼女は気が付いた。自分の周りを、いかにも童貞や処女臭い男女が取り囲んでいるのを。
「い、いやぁぁぁぁ」
「リア充、絶対、逃がさないから」
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