第4話雨上がり予知夢

周囲は泥の海だった。すごい豪雨だったが、雨は上がり、青空が広がっていた。救助のゴムボートに他の救助者と一緒に乗って、避難所に向っていた。夢で見た光景そのままだ。間違いない。多くの家が一階まで浸水し、泥水から顔を出している信号機も、夢で見たままだった。

やはり、あれは予知夢だったか。子供の頃から、あ、この景色は夢で見たことがあるということが何度もあった。今、目の前に広がっている光景も見覚えがあった。だが、夢で見たときは、何かの映画のワンシーンを夢で思い出したと思い、未来の光景だとは思わなかった。この洪水で、多くの人が死んだという。もし、あの予知夢が現実だと気づいて、人々に警告していたら、犠牲者を、少しは減らせたかもと思ったが、たとえ、あれが予知夢だったと気づいて警告しても、誰も信じてくれなかっただろうと私は思い直した。

そう言えば、あの夢には続きがあって、確か、どこかの体育館みたいな場所で、たくさんの遺体袋が並び、その遺体袋の中に、両親の顔があったのを思い出した。あのときは、何かの映画のワンシーンとごちゃまぜになっただけだと思っていたが、このままゴムボートに乗ってただ避難しては、両親の遺体に会うだけだと気づいて私は絶望した。まったく、ひどい予知夢だ。外れて欲しいと願うことしかできないが、子供の頃から、予知夢として見た光景の続きが夢と違っていたことだけはなかった。

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