第3話雨上がりの幽霊
雨上がりに現れる私を観たら、あの世に連れていかれるという噂が広まった。ひどい言いがかりで、私には、そんな力はない。そりゃ、死んだ自分より生きている人の方が幸せそうでうらやましいとは思う。だが、肉体のない幽霊に何ができると言うのか。
雨上がり、つまり、雨が降った直後は、雲が多くて薄暗く、何となく幽霊が見えやすいのだろう。だが、幽霊が見えたからと言って、あの世に連れて行かれる、幽霊にあの世に連れて行く力があるというのは、心外だ。もし、そんな力があったら、ここに留まらずに、殺しに行きたいヤツが何人もいた。一番は、就職した私の給料目当てに金の無心に何度も訪れた毒親、私に学費を出すのがもったいないと言って大学進学を諦めさせておいて、仕方なく就職すれば、就職を期に家を出た私に育ててやった恩を返せと金をせびりに来て、挙句に私が死んだ後の葬式でも私の香典をネコババしようとした毒親だ。
親だけではなく、大学に行けずに高卒で就職した私を見下す会社の上司たち、本当、死んだ私には、あの世に連れて行くべき大人がたくさんいた。
親がケチったため、きちんと49日をして成仏させてくれなかったので、私はあの世へ行けずに現世に留まり、雨上がりの幽霊として多くの人に見られるようになっただけで、誰かをあの世に連れて行くために、この地に留まっているわけじゃなかった。
できれば、さっさと成仏して、転生したいと思っている。
好きでこの事故現場に縛られて、地縛霊をやっているわけではない。だから、雨上がりは幽霊が見えやすいようなので、私は無事に成仏したいと通りすがりの人たちに声をかけていただけだ。だが、きちんと私の声を聞いてくれるそんな都合のいい霊能力者は通らなかったので、今日も私は、通りすがりの人たちに必死で声をかけ続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます