第92話

「ありがとう、花房」


「っ!!芹沢くんに感謝される日が来るんて!」


「テンションが若干うざい」


「あ、いつもの芹沢くんだ」




撫でていた手を下ろして、頭を元の高さに戻した芹沢くんを見上げる。




「そろそろ帰ろうかな。私、バスで帰るけど芹沢くんは?」


「歩いて帰るよ。ここから家近いから」


「そっか」


「バス停ってここから数分歩いたとこ?」


「そうそう」


「なら、送ってく」




素っ気なくされることが多いけど、雨の日に傘に入れてくれたりバス停まで送ってくれたりと優しい一面がある。


ガサガサと揺れる手に持った袋と2つの足音。



休日の昼過ぎに2人並んで歩くなんて、まるで恋人みたいじゃない?


ニヤけが止まらずなんとか唇と頰に力を入れて踏ん張る。




「そう言えば、恋する相手見つけた?」




唐突な質問にバッと横に向く。

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