第91話

「でもそれは芹沢くんが優しいからだと思うよ」


「…は?」


「私だったら“意味わかんない!!”ってなって絶対連絡も取らないもん。ちゃんと最後まで話を聞いてくれる芹沢くんはちゃんと優しいし、良い人だよ」




私の言葉がどれだけ響くかなんてわからない。


だけどありのままを、思ってること全部ぶつけた。




「大丈夫!」




にっこり笑えば、その茶色の瞳が大きく開かれる。


いつもは無表情なのに今日は悲しそうな顔をずっとしているから、元気づけようと笑顔を見せた。




「……慰めて」




私よりも背の高い芹沢くんの頭が下がってくる。


綺麗な顔が至近距離にきたことにドキドキしながらも、そっと手を伸ばす。




「えーっと、よしよし?」




太陽に反射してより明るく見えるその髪をわしゃわしゃと撫でてみる。


大人しく目を閉じてそれを受け入れる芹沢くんは大型犬みたいだ。



本音を織り交ぜて、弱さを見せてくれた。


それが何より私にとって嬉しくて頬が緩んだ。

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