第90話
「だから俺といれば周りからいじめられなくなると思って近づいてきたんだよ。俺は何も知らずに、あぁ俺のことを好きになってくれる子がいるんだなって単純にそう思った」
紡ぐ言葉が、発する声が。
悲しみを帯びて夏の日差しに溶けていく。
伏せられた瞳には傷跡が見える。
「だけどずっと俺と一緒にいていじめられなくなった途端、関わってこなくなった。都合良いよな」
「………」
「なんとなくわかってた。それなのに時間が経てば始めはそういう目的だったとしても心が変わるんじゃないかって勝手に期待した」
心に残った傷が痛いんだ。
だから、前に進めない。
「少しでも靡いた俺は馬鹿みたいだな」
どうして恋をしようとしないのか。
芹沢くんのすべてが曝け出される。
「馬鹿なんかじゃないよ」
「同情してくれてる?」
「そうして欲しいならするけど、私は芹沢くんには前を向いて欲しい」
「…ポジティブ思考め」
「確かにそんなことされたら傷つくけど、忘れちゃえばいいのに芹沢くんは今でも覚えてるんでしょ?心残りだったから宮坂さんに会ったんじゃないの?」
ちゃんと会って話をした。
それは2人にとって前に進めるきっかけになったはずだと私は思う。
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