第79話

「聞いてる?答えてよ」


「っ、」




どうすればいいかわからずに後ずされば、右腕を強く掴まれる。




「ちょっと、離してよ!私、さっきも言ったよ、あなたとは付き合わないって」


「だから、付き合ってみようって言ってるだろ!」


「花房さんが嫌がってるから離してあげたら?」




突然聞こえてきた第三者の声に私の腕を掴む力が緩まり、慌てて振り払って距離を取る。




「しつこい男は嫌われるよ。それに、無闇に腕を掴むのはやめておいた方がいいと思うけど」




どこかに向かっているのか、偶然通りかかったらしい仲宗根くんは困っている私を助けてくれる。


正論を言われたその人は謝ることすらしてくれず、踵を返していった。




「……もっと警戒心を持った方がいいんじゃない?」


「芹沢くんにも同じようなこと言われた」


「崇音と一緒にされるのはなんか複雑。まぁ、考え方とかも似てるから実際そうなんだけどさ」




ズキズキと痛む腕をもう片方の手で押さえながら無意識に緊張していた体の力を抜く。

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