第78話

「花房さん、ちょっといい?」




昼休みがきて、トイレに行った帰り道に話しかけてきたのは見知らぬ男子生徒。


同じクラスじゃないことはわかった。


驚きで声が出ず頷くと、「ついて来て」と言われてくるりと体を方向転換する。


向かったのは校舎近くの中庭。




「あのさ、突然でびっくりさせちゃったと思うんだけど、花房さんのこと入学した時から気になってて、」


「…う、ん」


「良かったら俺と付き合ってください」




どうやら私にもモテ期が到来したらしい。


告白されたことなんてなかったからどう返事すればいいのかわからず、うろうろと視線を彷徨わせる。



真面目そうな男の子。


緊張しているのか声は少し震えていた。




「ごめんなさい、付き合えないです」


「理由聞いてもいい?」


「好きな人がいるの。だからあなたとは付き合えない」


「でも、付き合ってみたら気持ちが変わるかもしれないでしょ。だから俺と付き合おうよ」




ちゃんと断ったのにすんなりと諦めてくれない。

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