第77話

◻︎




「じゃあ、この英文を訳してみて。早く出来た人は次のページの文も訳していいからね」




漏れ出そうになった欠伸をなんとな堪えて、ぎゅっとシャーペンを握る。



テストに球技大会とここ最近は濃い時間を過ごしてきたから、何もない普通の日常がどこか寂しく感じてじまう。


8月が近づくに連れて熱くなる気温。


教室は冷房が効いていて快適すぎるせいか、チラホラと机に伏せて寝ているクラスメイトもいる。


高校になると先生もわざわざ寝ている人を起こしはしない。



ぼんやりと英語の教科書を見つめる。



今頃、芹沢くんは真面目に授業を受けてるんだろうか。いや、もしかしたら寝てる可能性だってある。




「例文をきちんと読んで、何文型なのかわかれば難しくはないから」




先生の声は穏やかで眠りに誘われる。


重たい瞼をなんとかこじ開けて、訳語をノートに書き込む。




「じゃあ来週までに今日やったところの復習と次の予習を忘れないように。先生もお腹空いてきたから今日はこの辺にしとこっか」




チャイムが鳴る5分前。


眠気と戦う生徒に見兼ねて先生は仕方なさそうに笑って授業を終わらせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る