第76話

「てか、暑」




芹沢くんはシャツの首元を引っ張り上げ、汗を拭う。


それと同時にシャツが引っ張られたことによってチラリと見えたのは鍛えられた腹筋。


コクリと息を呑む。




「で、お前は何してんの」


「っ、刺激が強すぎて直視出来そうになくて!」


「見んな」




両手で顔を覆いながらも指の隙間から見つめていれば、私の視線に気づいた芹沢くんは眉を寄せる。


でも、腹チラに助かる命はここにあるの。




「わ、何するの!」


「こっちのセリフだわ。人の腹見て興奮すんな」




片手を伸ばして私の頭をガシッと掴む。


扱いがかなり雑いんですが。




「腹チラしてきたのは芹沢くんじゃんか!そんなの見せられたら見ちゃうのうが本能だってば!」


「はいはい、俺が悪かった」


「他の人にほいほい見せちゃダメ!」


「なんで花房が俺の権限持ってるんだよ」




あーだこうだと言い合いをしていれば、迎えに来たハッチーが私達を見て「漫才はやめろ」だなんて呑気なことを言ってきて、会話はそこで終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る