第72話
午前と午後の間に設けられたお昼休みが終わり、なんとなく外の空気を吸おうと校舎を出る。
グラウンド近くの水道で顔を洗っている後ろ姿に、駆け寄ろうとした時、
「崇音くーん!」
高い声がその人の名前を呼んだ。
芹沢くんはポタポタと肌から流れ落ちる水滴をタオルで拭いながら声のした方に顔を向ける。
先越されてしまった私はそっと近くの壁に体を預けて、芹沢くんに話しかける可愛いらしい女子を見た。
ジャージに入った刺繍の色は緑。
つまり1個上の先輩だ。
うぅ、同じ年の女子からだけじゃなくて先輩からも人気なのかぁ。
なんでそんなにモテるんですか、芹沢くん。
「試合めちゃくちゃ活躍してたね!」
「…あぁ、はい」
「仲宗根くんと一緒にいるところよく見てたけど、崇音くん達すごく怖そうだったから中々話しかけられなくてね、」
「………」
「だから今1人の芹沢くん見てラッキーと思って」
きゅるんとした上目遣いで芹沢くんにアタックしているんだと見てわかる。
だけど芹沢くんの表情はどこか暗い。
「ねぇ、私と付き合ってくれない?」
その言葉の軽さを不快に思ったのは私だけなんだろうか。
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