第71話

今度はボールを拾ったチームが反撃する時間だ。


ふわりと上げられたアタッカーへのトス。


ゆっくりと助走をつけ、足のバネを使って高く飛び、大きく右腕を開いて振り下ろす。


その横顔は楽しそうに笑う。


大きく音を立てて、ボールは床へと叩きつけられた。




「───っ」




その瞬間、きっと誰もが芹沢くんに夢中になった。



チームメイトに飛びつかれ、頭を撫でられるミルクティー色の髪がふわふわと揺れる。


巻き起こる大歓声の中、ただその姿に目を奪われた。



こんなの、皆好きになっちゃうよ。


誰にも見られたくない。


彼女でもないのにそんなことを考えてしまう。


ズキズキと胸が痛くなる。


素直に喜ぶことが出来ない私は最低かもしれない。




「華子ちゃん…?」


「あ、終わったみたいだし戻ろ!」


「う、うん」




近い存在になれたと思ってたけど全然遠いじゃんか。


自惚れたらダメだって、私。

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