第62話

昼過ぎの穏やかな教室で、一緒にいられる幸せに浸る。


一緒にいれなかった分の時間まで味わうように。




「あ、そうだ、これ、あげようと思って持って来てたんだった!」




朝は覚えていたのに勉強のせいですっかり忘れてしまっていたことを思い出した。


鞄の上の部分に置いてあった手のひらサイズの紙袋を取り出す。




「この間のタオルのお礼に作ってきたの!手作りが嫌じゃなければ是非!」


「俺が貰っていいの?」


「芹沢くんのために作ったから」


「……ありがと」




今日のテストは得意なコミュニケーション英語と国語だったからお菓子を作る余裕があった。


といってもそんなに時間のかからないパウンドケーキにしたんだけど。


甘さたっぷりカシューナッツ入りのパウンドケーキは食べやすいようにカットしてある。




「食べていい?」


「全然いいよ!」


「いただきます」




そっと紙袋を開いて中身を取り出して口に運んでいく。

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