第55話

「これって」


「あぁ、そのタオル妹の」


「ええっ!私が使って大丈夫だった?」


「別にそのくらいで怒らねえって」


「ちゃんと洗って返すから」




なんだか色々と申し訳ない。


尽くすどころか尽くされてばかりだ。




「花房は元気になったり落ち込んだり表情がコロコロ変わって面白いよな」


「……褒めてる?」


「いや?ただの感想」


「どうせなら褒めて欲しい」




右肩だけが雨に濡れてシャツの色が変化している。確か、学校を出てからバス停まで私の左隣を歩いていた。


その事実に気づいてしまい、胸が熱くなる。


探そうとしていなくても、良いところを見つけてしまうと更に好きになってしまう。


ベンチに腰掛けた状態で足をぶらぶらさせながら熱が冷めるのを待つ。



お気に入りの白のスニーカーは雨水で汚れている。


知らぬ間に水溜りを踏んでしまっていたんだろう、きっと。

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