第52話

せっかく濡れないように傘に入れてもらったのに、バス停近くで何をしているんだろう私は。


胸が苦しくて吐き出したくて。




「私はこれから本気の恋、するから」




もちろん相手は芹沢くん、あなただよ。



真っ直ぐに前だけを見据えて笑う。


嫌な思い出がそこにあるなら楽しいことで、幸せなことで塗り替えてしまえばいい。



ぎゅっと手のひらを握った。



まだ私と芹沢くんの関係に名前なんてないのに。


その間にある距離がどれくらいなのかさえ測り切れてないのに、堂々と自分の意思をぶつけてしまった。




「ふはっ、何の宣言だよ」




馬鹿にするわけでもなく、困ったような笑みを浮かべる。




「っ、私は真面目に言ってるの!」


「あーわかったって。ちゃんと見ててやるからお前の恋。慰めてはやるから当たって砕けて来い」


「なんで振られる前提なの!?」




割と良いアタックをしてるつもりなんだけど、もしかして気づいてない?

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