第51話

平然と告げないで欲しかった。


自分から聞いたくせに理不尽な思いが浮かんでくる。




「そ、そっか。その人のこと忘れられないから恋愛に興味がないの?」


「俺がまだ引き摺ってるって?」


「いやそいうわけじゃ、」


「残念だけどそういうんじゃない。相手が俺のことを彼氏にしたがってたって言った方が正しい」




そっと横顔を見てみても、表情は穏やかで言葉に嘘はないんだとわかった。



じゃあ本当に興味を持ったことがないんだ。


面倒見が良くて優しい雰囲気の芹沢くんがモテないはずがない。


私はそんな彼に好きになってもらえるのかな。


不安だけがどんどん溢れて募っていく。




「どんなに言葉が良くても見ればわかる。本気かどうかくらい」




その声は雨に混じって、悲しみを帯びたように聞こえた。




「なら、ちゃんと見ててよ、私のこと」




芹沢くんは立ち止まった私に数秒遅れて止まり、目を見張る。


降り注ぐ雨が心地よいと思ってしまう。

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