第50話

男子と同じ傘の下に入ることなんて今までにない。


こんな経験はきっと最初で最後な気がする。



三奈達にバイバイも言わずに来ちゃったなと他のことを考えても、すぐに意識は芹沢くんの方に行ってしまう。


2人で差すには少し小さい傘。


傘のせいで見えにくい前。



思ったよりも肩が触れる距離に脈が速くなる。



雨が降ったら気温が下がって寒いはずなのに今はそんなこと一切感じない。




「今まで彼女いたことないんだよね?」


「唐突だな。彼女はいたことない」




恋に興味がないって言ってたからそうだとは思ったけど聞いておきたかった。




「でも、」


「でも?」




雨音に掻き消されたないように声を張り上げる。




「彼女になりそうな相手はいた」




胸のどこかでチクリとした痛みがした。


多分、それもわかってたはずなのに、いざ言葉として聞くと受け止めきれない。

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