第26話
「…………あ、俺?」
耳からBluetoothのイヤホンを外して、ぱちくりと瞬きをしたその人は振り返って私を見る。
私の声は全く聞こえてなかったらしい。
だから声をかけても全然反応してくれなかったのか。
「あぁ、この間の、」
「は、花房華子です!」
「仲宗根と同じクラスの子だっけ」
私のこと、覚えてくれてた!
あの時から会えずにいたから忘れられているかもしれないと思ってたから良かった。
「あなたの名前教えてくださいっ!」
気持ちが昂った勢いのまま、会ったら言おうと思っていた一言を口にする。
私の言葉にその場にいた彼の友人らがヒューと冷やかすように口笛を吹く。
うん、このノリは嫌い。
睨みたくなるのを堪えて
「……もしかして、そのために俺に声をかけたってこと?」
私を囲うようにして立つ自分の友達を横目にちらりと見て、なぜか心配そうに眉を寄せる。
女子1人を高身長集団が囲っていると側から見ればやばい状況にしか見えない。よく言えば派手でモテそうだけど治安が悪そうに見えるのは事実だ。
だから、心配してくれてる?
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