第19話

「本当はサボろうと思ってたし結果オーライ」


「だから北校舎の5階に行こうとしてたの?」


「そういうこと。なんか少女漫画でありそうな展開だったよな、さっきの」


「うん、そうだね」




やたらと会話を繋げてくれて、私に落ち込む時間を与えてくれない。これは私を慰めてくれてる?


それに少女漫画みたいって言う男子初めて見たな。


私もたまに少年漫画読むし、今じゃ普通のことか。




「俺、妹いるからよくそういうの押し付けられて読まされてた。だから知ってる」




私の心を見透かして僅かに口角を上げる。




「…ふふっ、仲良いんだね」


「わがままな妹だけどな。て、いつまでそこに座ってんの」


「怪我はしてないんだけど、階段から落ちたのが初めてで、腰が抜けちゃって!」


「俺も階段から落ちる奴初めて見たわ」


「……」


「今のはお前を責めて言ったわけじゃないって」




この人は私が悲しい顔をすると、面倒くさそうに息を吐いても優しさを感じる言葉をくれる。


近寄りがたい雰囲気があるのに喋ってみるとそうでもない。

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