第16話
「っ!?」
ただ踏み出した先に地面はなく、自分がいた場所が階段であることをすっかり忘れてしまっていた。
ぐらりと前に傾いた体。
重力に抗うこともできずに私は階段から落ちた。
次に襲いかかってくるはずの痛みにぎゅっと目を瞑る。
何かが地面と激しくぶつかる音と、そして段ボールが擦れた音。
なぜか、来るはずの痛みが一向に来ない。
「…う」
恐る恐るそっと目を開けば、案の定床に散らばったファイルがあった。
重い段ボールを持っていた手は誰かのシャツを掴んでいて、ぼんやりとした意識が徐々に鮮明になっていく。
「っ、えっ!?」
「……気づくのおそ」
そして、私はすっぽりとその人の腕の中に収まっていた。
階段から落ちた衝撃は全部吸収してくれたらしく、綺麗な顔が痛みに歪んでいる。
「ご、ごめんなさいっ!!私、ほんとに、ごめんなさい!!」
まさか自分じゃなくて他人に怪我させるなんて、最低だ。
あたふたと後退ればその人は僅かに目を細めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます