第8話

◽︎




「──華子ちゃんって好きな人いないの?」


「…えっ?いや、いないけど」




突然の言葉に箸で掴んでいた卵焼きを落としそうになり、手先に力を込める。


皆がそれぞれ友達と集まってご飯を食べる穏やかなお昼休み。


最近流行りのK-popの音楽が流れる中でさらっと放たれた問いかけに詰まりながら答えれば、




「そうなんだぁ」




三奈はサンドウィッチを頬張ってにっこり笑う。


何かを含んだ笑みに黙って次の言葉を待っても訪れない。




「どうしたの?」


「ううん、華子ちゃんが好きになる人ってどんな人なんだろかと思ったらわくわくしちゃって」


「JKのうちにできるといいんだけどね」




小学生の頃、コロコロと好きな人が変わっていたのが懐かしい。


運動が出来る、皆が好きだから好き。そんな簡単な理由で好きだと言っていたあの頃の純粋な私。


今は女友達と話す方が楽しいと思ってしまうし、男の子に積極的に喋りかけることもないから必然的に出会いはない。

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