第4話

誰に語りかけるわけでもなく、鼻歌混じりにソファーの上でくつろいでいれば、階段を下りてくる足音が聞こえてくる。


軽やかなそれに姿を見なくても誰なのかすぐわかった。




「お姉ちゃん、おはよー」


「おはよう。ニヤけてないで学校に行く準備は終わったの?」




お姉ちゃんはビシッと決まったスーツ姿で私の前に仁王立ちする。


綺麗に染まった茶色の髪を靡かせて、いつも通りの濃いめのメイク。


流石お姉様、お綺麗で。


だなんて茶化した言葉を心の中で呟いてみる。




「もちろん!とっくの前に!」




私は夏休みの宿題を残り3日で仕上げるようなタイプだから、お姉ちゃんはこんな風に心配するのもわかる。




「あ、そう言えば今日英単語の小テストがあるけど勉強してないや」


「…お姉ちゃん心配かも」


「いやいや、お姉ちゃんも私と同じくらいの時遊んでたじゃん!それに比べたらまだマシな方でしょ」


「私、過去は振り返らないタイプなの」


「はいはい、そーですか」




こんないかにも仕事の出来る女って感じを醸し出しているのに中身は高校生の時から変わらない。

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