第4話 開発者に直談判
早速翌日、私はゲームメーカーのオフィスにやってきた。
「MAKIさん、いつもウチのゲームをありがとうございます!」
部屋で出迎えてくれたのは、いつも生放送などでゲームの情報を発信している遠藤さん。『ゲームセンター版プロデューサー』を名乗っている。
「遠藤さん、はじめまして」
「改まらなくて大丈夫ですよ! いつもプレイ動画拝見しています。ここまでやり込んでくれて開発チーム一同、感謝していますよ」
真っ白な壁に花の香り、適度に入る日差しからこの部屋、ましてはこのオフィスのよさが伺える。普段のゲーセンとは大違いだ。
「では僭越ながら早速本題のほうに入らせてもらってもよろしいでしょうか?」
改まらなくても大丈夫、この一言をきっかけにに話のギアを一段階あげる。
「話は事前のメールで粗方聞かせてもらった通りですね?」
「はい」
「結論からいくと、これは無理があるんですよ……ごめんなさい」
その言葉を聞いた瞬間、私の周りの時間が止まった気がした。
「そうなんですか、一体どこが?」
一瞬の長い時を経て、私は言葉を紡ぎ出す。
「ゲーム側のタイミング判定です。機械が判定できるタイミングでしかゲームを作ることができない。約50分の1秒ですね、これ以上速くすると機械は追い付けないかもしれませんが、成績をつけることもできません――単純に説明するとこうなります。」
「そう、ですか……」
言われた理由は、とても合理的なもので、私には言い返す言葉が無かった。
「アイデアは素晴らしいですし、現役日本一のプレイヤーにそのような挑戦をしてもらうのはわが社にとってもゲームのアピールになるので、是非とも応援したいんですけどね……」
かけられた言葉も私にとっては「何バカなことやってんの!?」と蔑む言葉に感じられた。
「無茶な要望して、申し訳ありませんでした……」
「こちらこそ、本当にごめんなさい……」
謝られても、私の気持ちが晴れることなどない。
最初は美しく入射していたはずの日差しも、いつの間にか曇り空になっていた。
帰りの新幹線の中、スマートフォン版でいつもの音楽ゲームをプレイしていた。
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Indian to the right
Score:1000000 Rank:SSS+
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安定の満点。でも私的には不満だった。いつもは100分の1秒くらいの正確さはあるのに、今日は少しプレイがぶれていた。
今日はすべてがうまくいかない。ここまでゲームに熱中してきた人生が否定された気分だ。
車窓から見える景色はもう雨空だし、新幹線の席の揺れもいつもより激しく感じる。
もう、何も考えたくない。私には音ゲーしかない。
こうなりゃヤケクソだ。帰りにゲームセンターに行って、徹夜でゲームでもしようかな。
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