楽園を輪読する流浪の黎明は牢獄に囚われた

 我らが生きた空はもう何処にもない

 よく似た世界が幾重にも寄り添い

 魂の花を延々と咲かす

 円の歌を厳かに少女は歌った

 蒼の旅人は終わりなき旅路を往く

 辿り着いてはその肩書きを失うから

 始まりの人は世の柱

 向こう側の人間が縋る柱




【楽園を描いた者の末路】


  忘却を喪失させる記憶

  鳴り響くのは贖いの叫び

  朽ちた腕には折られた絵筆

  世界は何処にでも創られる

  描き手の花を咲かせながら


[螺旋が示した31番目の詩]




【輪読の騎士団】


  異国の経典を抱いて眠る

  逃亡兵の棺は帰国した

  生きた道を標した一書と照らす

  放浪の民は夢幻を彷徨い

  時機に我らと敵対す


[血塗れて探した27番目の詩]




【流浪の翼を失った後】


  彼の旅路に終わりがないのならば

  幾度となく裂け目を目指し

  飛び降りて尚も蘇り

  流れに従い罪重ね

  贖罪の旅を積み重ね


[夢が見せた14番目の詩]




【黎明を知らぬ里】


  黎明を望む勇士の里に

  独り吟ずる詩人が寄りて

  真の果実を口にする

  切り分けるための短刀を

  胸に沈めて歩を止めた


[血塗れて探した23番目の詩]




【牢獄の鏡】


  凍土に縋る鉄鎖の闇は

  囚人を逃がす蠍を捕らえ

  歌う少女はその身を焦がし

  蛇は静かに次代を語る

  透明な檻は万華鏡


[夢が見せた15番目の詩]

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