蠍は深紅の水神と聖職者を底に誘った

 抜け殻と化した我が身の傍で

 最後の歌を君は紡ぐ

 赤い花を水面に落とし

 真っ赤な嘘に染め上げた

 それが神託だと誰が言った

 其処に辿り着いてしまうのか

 世界が反転する日を君は願うのか

 女神とよく似た色を孕みながら




【蠍が見た夢】


  琥珀の中の我が魂

  愛する者を失った自責の念

  悪戯に生を貪る暗愚王

  炎の扉を開く鍵

  虚ろな肉体に流れる歌は


[余話が歌った46番目の詩]




【深紅の花が咲き誇る岸辺】


  美しきは生命の色

  溢れる血潮はあなたの名

  触れることを望み触れられることを拒む

  此処に辿り着いてはいけない

  魂の花が咲き誇る其処へは


[魂が求めた9番目の詩]




【水神と待つ門番】


  母なる海の守り神

  深い深い波の狭間に落とされて

  退屈凌ぎと水底に踊れば

  役目を終えた門は開かれる

  待ち侘びた鉄の番人は高笑う


[余話が歌った44番目の詩]




【聖職者を狂わせた神託】


  女神に仇なす者は異端者

  向こう側より舞い降りた

  無知な女神は狂乱の死神

  神殺しの術を託されし羊頭

  貼り付けられた笑顔のままに


[螺旋が示した32番目の詩]




【底で見た景色】


  希望と絶望を詰めた箱

  庭園を彩る穢れの大輪

  醜いもので塗り固められた情景

  かつて描いた楽園の対

  独り善がりな幻想の影


[夢が見せた18番目の詩]

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