第9話



 「…えっと」



 上擦ったような声の下で、猫は微笑んだようにニャーと鳴いた。



 ……なんだ…


 ………気のせいか……



 (喋るわけないか…)



 そう思い、猫の頭を撫でる。


 だけど、そんな私をからかうようにクルッと回り、「こっちに来て」と、トコトコ歩き始めた。



 …………



 ………嘘………でしょ……?



 周りの景色が変わったこと。


 そのことに対して、少し考える時間はあった。


 だけどそれ以上に驚いたのは、目の前にいる猫が、人間のように喋ったことだった。



 “喋った”



 そう、そんなことあり得るわけないって思うよね?


 漫画やアニメの世界じゃあるまいし。


 でも、「喋った」んだ。


 それは間違いなかった。


 空耳なんかじゃなかった。


 驚きのあまり、しばらく動けなかった。


 その場に立ったまま、歩いていく猫の後ろ姿を見てた。


 

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