1.動き出す時間



あれから数年。




晴れた空。


無限に広がる青い海の下で、一艘の小船が浮かんでいた。その船には二人の船乗りと犬が乗っている。


ルイスは船を漕いでいる。


エディはお酒を飲みながら呑気に歌っている。


愛犬のルナは人懐っこく、二人のことが大好き。


ルイスとエディは、今日まで色々なところを旅してきた。どんな時でもお互いを助け合いながら、困難にも乗り越えてきたのだ。


しばらくすると、大きな船が見えてくる。


「うっひょ〜!でっけぇ船だなぁ?」


「は〜。本当だね。僕らもこれくらい大きい船で旅をしてみたいな!」


実はこの大きな船は海賊船だった。船に乗っている海賊は髪の長い赤毛の少女を海に落とそうとしていた。その様子を、ルイスは見つける。


「ちょっと!エディ、あれ見て!あの人、女の子を落とそうとしてるよ!」


「はぇ?どこだぉ?幻覚じゃあねぇのか?」


エディは酔っ払っていて、何が起きているのか全く理解していない。


「もう!飲み過ぎだよ!とにかく、海に落ちちゃったら大変だ!エディ、行くよ!」


ルイスは急いで船を漕ぐ。


「どこにぇ?」


「女の子が落ちるところだよ!」


「はぁあっ?るぅちゃん、この船にあの嬢ちゃんを落とす気なんか?!どう考えても無茶だろぉ!」


「やってみなきゃ分からないじゃないか!」


ルイスは少女を助けられるなら、どんなに無茶な手段でもやる人だった。


エディはルイスを止められず、ルナを抱きながらソワソワしていた。


少女はついに落とされた。


しかし


ドガッガガン!


少女は見事小船に落ち、激しく揺れた。


小船に持ち込んでいた物はほとんど落ちてしまった。


エディが大事に飲んでいたお酒も海の中に沈んでいく。


ぽこぽこぽこっ


「あぁああ!!!オレのぉ……オレの酒ぇ………!!」


ルナは船の揺れで、暴れてしまう。


奇跡的に船は壊れずに済んだ。そして、少女を助けることが出来、ルイスは一安心する。少女は船に落ちた衝撃で気絶していた。


海賊船はだんだん遠ざかっていく。ルイスは追いかけようと思ったが、少女の手当ての方が大事だと判断し、一番近くにある島へ行こうと決める。


「おーい!ここで一番近い陸地を探してくれー!食べ物があったら嬉しいんだけどー!」


「クィァオー!クァオ!」


ルイスは飛んでいたカモメに声をかける。


数分経つと、カモメはルイスたちの元へ降りてきて、近くに無人島があると教えてくれた。


「クァィオ!」


「ありがとう!近くに無人島があるって!行こう、エディ!」


ルイスは再び漕ぎ続ける。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る